回転操作・スライド操作感


体性感覚 −平成12年度 NEDO20人計測−




1.被験者数

年代 合計 20〜29 30〜39 40〜49 60〜69 70〜79 80〜89
合計 20 4 3 1 3 5 4
男性 10 2 2 0 2 2 2
女性 10 2 1 1 1 3 2


2.計測方法


ブレーキにより操作時の抵抗を一定に保つことができるトルクメーターを用いて、回転操作時のトルクを計測する。ダイヤルによる回転操作、レバーによる疑似スライド操作時の制動力の大きさと操作感との関係を調査した。詳細は計測方法を参照のこと。


3.計測結果


(1)ダイヤルを用いた回転操作特性


ダイヤルによる操作感と制動の強さ、調節操作時の回転トルクピーク値との関係を図に示す。

この図のFBはフィードバックトルク、ピーク値は調節操作時のピークトルク、表示は平均値、最大値、最小値を示す。

結果の概要を以下に示す。

1)フィードバックトルクと操作トルクピーク値との差は小さく、操作しやすいトルク、許容限界トルク、操作限界トルクのいずれも、若年者、高齢者の差が小さいという結果となった。

2)操作しやすいと感じる回転トルクの平均値は0.005Nm(接線方向の力では約30gf)

3)スムーズに操作できる限界トルクは0.015Nm(接線方向の力では約100gf)

4)操作できる限界トルクは0.036Nm(接線方向の力では約245gf)となった。

5)ダイヤルを左右に回しながら操作したときの感覚に対応したフィードバックトルクと、そのフィードバックトルクの時に目盛りにあわせるような操作をしたときのピークトルクとは比較的類似していた。

6)操作時のトルクは操作速度により変わるが、今回の計測では、操作速度が非常に速かったり遅かったりした被験者はいなかったように思われる。

7)ダイヤルの目盛りあわせ操作の場合、合わせ込みの正確さをどの程度にするかにより、結果が変わることが知られている。今回の計測装置では、ダイヤルに固定した指示針を表示盤上の目盛り線に合わせる操作をしてもらった。ほぼ、合っていればよいというレベルの調整であり、注意深く合わせなければならない場合には、操作トルクは小さくなる可能性がある。

8)今回使用した計測装置の特性上、フィードバックトルクの値が0のときの制動力をそれほど小さくすることが出来なかった。そのため、抵抗がなさすぎて操作しにくいという評価は得られなかった。


(2)スライド操作特性


今回使用したスライドレバー装置は回転軸に長さ100mmの棒を取り付け、左右への可動範囲を制限することにより前後方向の動きを押さえ、見かけ上スライド操作になるようにしたタイプのものである。このような方式は多くの装置で使用されている。

スライドレバーによる操作感と制動の強さ、調節操作時の回転トルクピーク値との関係を図に示す。

この図のFBはフィードバックトルク、ピーク値は調節操作時のピークトルク、表示は平均値、最大値、最小値を示す。

結果の概要を以下に示す。

1)スライドレバーを用いた計測ではダイヤル操作と違って、若年者に比べて高齢者は小さいトルクを好むという結果が出ており、フィードバックトルクと操作トルクピーク値との差は抵抗が大きくなるにしたがって大きくなった。

2)また、フィードバックトルクが小さすぎると軽すぎて調節しにくいという結果となった。

3)今回の計測による、ダイヤル操作とスライドレバー操作でのフィードバックトルク平均値は、操作感との関係では次のようになった。表中の数値はフィードバックトルク(Nm)、かっこ内の数値は操作部での接線方向の力(gf)を示す。

注)ダイヤル半径 15mm
スライドレバーつまみ部の軸心からの距離 100mm
操作感 ダイヤル操作 スライド操作
操作しやすい 0.005( 34) 0.007( 7)
スムーズ操作の限界 0.015(102) 0.027(28)
操作限界 0.036(245) 0.060(61)

4)スライドレバー操作の場合、軸心からの距離が長いため、ダイヤルと比べてフィードバックトルクが大きくても、操作は容易であるという回答が得られた。今回のように、軸心からの距離が長いレバー等を介して動かすような場合、ユーザーが無意識のうちに軸心に非常に大きな力をかける可能性があり、設計時には注意が必要であると言える。