作業しやすい範囲の計測


動作特性 −平成10年度 NEDO533人計測−




1.目的


機器や装置のスイッチを上面から押す場合を想定し、作業しやすい高さ、これ以上高くなると操作しにくくなる限界の高さ、これ以上低くなると操作しにくくなる限界の高さにおいて、楽に操作できる範囲、少し努力したときに操作できる範囲、できるだけ努力したときに操作できる範囲を計測した。


2.計測項目・内容・計測条件


計測姿勢は立位および椅座位、作業台高さは適正高さ、上限および下限高さとし、利き手側の第3指先点が楽に届く範囲、少し努力して届く範囲、できるだけ努力して届く範囲の計測を行った。

記録位置は、記録紙前端と利き手側の肩峰点を通る矢状面の交点を原点としたときの0°30°60°90°120°150°180°の7方向とした。

作業しやすい範囲の計測条件と項目・内容を表に示す。

表18 作業しやすい範囲の計測条件と項目・内容

姿勢 作業台高さ 条件 記録位置
立位 上限 楽に手が届く 0°30°60°90°120°150°180°
立位 上限 少し努力して手が届く 0°30°60°90°120°150°180°
立位 上限 できるだけ努力して手が届く 0°30°60°90°120°150°180°
立位 適正 楽に手が届く 0°30°60°90°120°150°180°
立位 適正 少し努力して手が届く 0°30°60°90°120°150°180°
立位 適正 できるだけ努力して手が届く 0°30°60°90°120°150°180°
立位 下限 楽に手が届く 0°30°60°90°120°150°180°
立位 下限 少し努力して手が届く 0°30°60°90°120°150°180°
立位 下限 できるだけ努力して手が届く 0°30°60°90°120°150°180°
座位 上限 楽に手が届く 0°30°60°90°120°150°180°
座位 上限 少し努力して手が届く 0°30°60°90°120°150°180°
座位 上限 できるだけ努力して手が届く 0°30°60°90°120°150°180°
座位 適正 楽に手が届く 0°30°60°90°120°150°180°
座位 適正 少し努力して手が届く 0°30°60°90°120°150°180°
座位 適正 できるだけ努力して手が届く 0°30°60°90°120°150°180°
座位 下限 楽に手が届く 0°30°60°90°120°150°180°
座位 下限 少し努力して手が届く 0°30°60°90°120°150°180°
座位 下限 できるだけ努力して手が届く 0°30°60°90°120°150°180°


3.計測装置


前記の操作しやすい高さ計測装置と同じ構造の台に記録板を取り付け、記録板上の記録紙に到達位置を記録した。記録板は可達域の計測にも使用できるよう、角度を変えることができる構造とした。

計測装置のイメージを図に示す。






図 作業しやすい範囲計測装置(イメージ)


4.計測方法


(1) 測定手順


・測定内容の教示 → 立位での測定 → 座位での測定
・この計測では、作業しやすい範囲だけでなく、計測方法が同一の「手が届く範囲(可達域)の計測」もあわせて行う。


(2) 測定内容の教示(例)


・この計測は、どれくらいの範囲まで手が届くかということと、どれくらいの範囲なら作業が楽にできるのかを、作業台の高さや角度を変更しながら測定します。
・測定した結果は日常使う製品などの設計に使います。普段、楽な時、少し努力した時、できるだけ努力した時にどのようにしているかを想像しながら、無理をせずに、マークを付けてください。


(3) 立位での測定


・作業台を立位上限高さにあわせ、記録板角度を90°(垂直)にする。
・体と作業台が軽く接し、利き手側肩峰点を通る矢状面が記録板の原点を通る位置に立ってもらう。場所が決定したら、足の位置を床にマークし、記録板と肩峰点の間隔をマルチン計測器で計測、記録する。
・記録板に表示してある黒線(0°、30°、60°、90°、120°、150°、180°の7本)の上で、楽に手が届くところ、少し努力して手が届くところ、できるだけ努力して手が届くところに手を伸ばしてもらい、感じをつかんでもらう。このとき、一つの動作が終わったら手を体の側に戻した後、次の動作に移る。
・なお、両足が床面と接していれば、体を自由に使ってよい。


○上限高さ・記録板角度90°での計測

・被験者の利き手側第3指先端にマーカーを装着する。
・記録板の0°から180°までの線上で「楽に届く」位置にマークを付ける。このとき、一つの動作が終わったら手を体の側に戻した後、次の動作に移る。(以下、同様)
・計測員はマークの側にどの計測に相当するか番号を付していく。(以下、同様)
・楽に届く位置が終了したら、0°の方向で「少し努力して手が届く」「できるだけ努力して手が届く」位置にマークを付ける。
・0°が終わったら同様にして30°から180°まで順次マークを付ける。


○その他の条件での計測

・上限高さ・記録板角度90°での計測が終わったら、被験者は控え場所に戻る。
・記録板角度を60°に変え、マーカーを変更(別の色にする)した後、被験者は再度計測位置に立ち、足位置を前回の計測と同じ位置に合わせる。
・上限高さ・記録板角度90°と同様の手順で、手が届く位置にマークを付ける。
・以下同様にして、上限高さ・記録板角度30°、上限高さ・記録板水平、適正高さ・記録板水平、下限高さ・記録板水平の順に手が届く位置にマークを付ける。なお、角度または高さを変えるたびに、マーカーの色を変更する。


(4) 座位での測定


・新しい記録紙と交換する。
・椅子の高さを座位身体寸法計測時の「座りやすい座面高さ」に合わせる。
・以下、立位と同様にして、手が届く位置にマークを付ける。


(5) 終了


・すべての計測が終了していることを確認し、被験者に終了を通知する。
・記録紙の原点とマークまでの距離を実測し、記録シートに記録する。