操作方式と調節時間


動作特性 −平成10年度 NEDO533人計測−


 

1.被験者数:533名(有効データ数は計測項目により若干異なる。)

 

年代

合計

16〜19

20〜29

30〜39

40〜49

50〜59

60〜69

70〜79

80〜

合計

533

28

96

95

71

50

82 91

20

男性 259 13 50 40 29 21 48 45 13
女性 274 15 46 55 42 29 34 46 7

 


2.計測方法


計測装置の前面に取り付けられた操作部を操作して、目標グラフの高さに合わせる。

ダイヤルは左右回転、レバーは左右方向のスライド式、押しボタンは2つのボタン(上昇ボタン、下降ボタン)を操作して、目標高さに合わせる。目標に合うと次の目標が提示されるので、それに合わせる。

6回合わせると一つの操作が完了する。このときに要した時間、操作のしやすさに関する内観報告を聴取する。


3.計測結果


(1)計測結果の解析方法


スタートボタンを押してから6回の合わせ込みが終了するまでの時間全体を用いて計測結果を解析すると、一部の計測で異常に長時間を要している被験者が多数含まれていることが判明した。それらの被験者についてビデオ画像等で確認した結果、操作部位を間違えて他の部位を操作していたり、スライド式レバーのつまみを回して飛ばしてしまい、装着までに時間がかかったりするなど、正常操作をしていないものも含まれていることが判明した。

このように、合わせ込みに要した時間全体を用いて巧緻性を評価するのは問題があることが判明したため、合わせ込みに至るまでのグラフ位置情報を解析して、目標近くに達した後、合わせ込みに要した時間のみを解析することとした。

すなわち、スタート以降1/10秒ごとに記録している調節側グラフの位置情報をもとに、計測結果を、スタートボタンを押した後グラフ高さを変え始めるまでの「反応時間」、目標近くまで高さを変えていく「立ち上り時間」、目標高さに合わせるまでの「調節時間」の3つに分けて解析した。イメージを図に示す。





図 計測結果の解析


なお、今回解析の対象とした調節時間の開始位置であるが、図にあるように、グラフ移動履歴の多くが指数関数的動態を示すことから、調節操作における一連の動作を一時遅れ要素の制御反応とみなし、時定数(0.63)を用いて目標高さの63%に達した位置を調節時間開始位置とし解析を行った。

また、調節時間の計測値にはOK判定時間も含まれるが、結果解析にはOK判定時間を除外した数値を用いた。


(2)OK幅と調節時間


次の図に操作方式別、OK幅別の調節時間を示す。左図は立位、右図は座位の計測結果である。

押しボタンによる調節の場合、立位、座位ともにOK幅については有意水準5%で有意差があり、OK幅が大きくなる(比較的ラフに合わせられる)ほど調節時間が短くなるという結果となった。しかし、ダイヤルとスライド式レバーでは有意差は見られなかった。

このテストで使用したスライド式レバーは、OK幅の大きさに関わらずどの操作方式よりも調節時間が長く、また操作感も悪いことから、目標に合わせる操作(微少操作)よりも、操作そのものが困難であったと考えられる。

ダイヤルは調節時間が短く、またOK幅により調節時間が左右されないこと、操作感も比較的よいことから、安定した操作ができたと考えられる。

一方、調節時間が短く、OK幅により調節時間が左右される押しボタンは、シビアな調節は困難であるが、操作自体は比較的容易であったと考えられる。




図 立位でのOK幅別調節時間               図 座位でのOK幅別調節時間



(3)性別・年代別の調節時間


次の図に立位および座位の操作方式別、OK幅別の調節時間を示す。

調節時間は、有意水準1%で年代間の有意差があり、立位、座位ともに操作方式に関わらず、年代が高くなるにつれ長時間を要するという結果となった。また、調節時間を性別に比較してみると、どの操作方式においても有意水準1%で有意差があり、男性の方が女性よりも短いという結果となった。

前述のOK幅と調節時間の関係について年代との関わりを見ると、図から分かるように、押しボタン操作の場合、OK幅が狭い(シビアな調節操作)ほど調節時間が長くなるという傾向は年代が高くなるにつれて顕著になっている。


(男性)                            (女性)




図 立位での年代別、操作方式別、OK幅別の調節時間



(男性)                            (女性)




図 座位での年代別、操作方式別、OK幅別の調節時間