高齢者のIT利用特性データベース

文字の特性と読みやすさ

■ 表示文字評価実験

■計測目的と計測内容

透過型液晶ディスプレイに表示した文字について、その大きさ、字間隔、行間隔を変化させ、読みやすさを評価した。さらに部屋の照度を変化させ、読みやすさの条件がどの様に変化するかについて評価した。また輝度やコントラストが一定の状態で、上記した文字属性のうちどれが読みやすさに対して貢献度の高い要因であるかを評価した。 合わせて、反射型液晶ディスプレイ、17インチCRT、プラズマテレビについて、透過型液晶ディスプレイとの比較を行った。 これらにより、高齢者に最適な文字表示条件を見出すことを目的とした。 被験者は、高齢者群17名、壮年者群8名、若年者群13名の計38名である。

■計測手順

透過型液晶ディスプレイ、17インチ型CRT、プラズマテレビのそれぞれに256階調の0(黒)、80(灰)、160(薄い灰色)の黒点を表示させて、20ルクス、100ルクス、300ルクス、500ルクスの実験照度のもとで、分光放射輝度計によって輝度測定を行った。照度はデジタル照度計により、床からの高さ750㎜における水平照度を測定した。また表示文字の背景である256階調の256(白)の画面の輝度を測定し、両者の比率によりコントラストを算出した。反射型液晶ディスプレイは0(黒)のみ測定した。また印刷物の輝度は分光測色計を用いて黒部分と白部分の反射率を測定し、両者の差によってコントラストを算出した。 それぞれの照度における文字の読みやすさを、主観評価表により、文字の大きさ、字間隔、行間隔、明るさ、コントラスト、総合評価として、長時間の読み取り作業の際の使いやすさについて評価の回答を得た。

■計測条件・環境

透過型液晶ディスプレイ (ADTEC社 AD-AC17R、画面320㎜×240㎜、1280×1024ピクセル)

主観評価実験に用いた液晶ディスプレイは17インチ型の透過型フィルム補償TN高解像度フルカラーTFT-LCDであり、表示輝度(3条件)×コントラスト比(3条件)の9条件に対して、19条件の文字サイズ、字間隔、行間隔を割り当て、文字フォントはMSP明朝体を使用した。画面中央に160×120㎜の文字領域を作成し、表示はディスプレイの背景を256階調の256(白)、文字色を256階調における0(黒)、80(灰)、160(薄い灰色)を採用した。上記領域は640×512ピクセルにあたる。またコントラストはディスプレイに設定されている100段階における0、45、85の3段階を使用した。

■計測機器

分光放射輝度計

ディスプレイの表示文字の放射輝度ならびに背景である白の放射輝度を測定し、その比よりコントラストを求めた。背景に影響されず液晶や配列単位までの測定を行うため、0.1㎜のサイズまで輝度を測定できるマクロレンズを装着して測定を行った。

主観評価記入用紙

主観評価表

■計測結果

読取りやすさの総合評価に作用している要因を見出すため重回帰分析を行った。 高齢者群の総合評価には、文字の大きさと文字間隔が有意にはたらいている。壮年者群と若年者群の総合評価には、文字間隔が有意にはたらいている。これらの結果から、一元的に文字の大きさが読みやすさを決定しているのではなく、全体の文字配置のバランスによって、読みやすさを感じていることが示唆された。 表示文字の読みやすさを、文字の大きさと字間隔の比率ならびに、空白部分の扁平率を用いた文字配置バランスで整理を行ったところ、読み取りやすさの文字配置バランス領域が存在することが分かった。この領域の境界は、文字間隔/文字の大きさでは、文字間隔が文字の横幅の2.5倍となる点であり、この数値を超えると評価は合格点を下回る。それに対し、行間隔/文字間隔(空白の扁平率)は47倍(文字の大きさの4.7倍)になっても合格点になっていた。

■参考

高齢者のIT利用特性データベース構築等基盤設備整備事業 (抜粋:知覚適合性(ディスプレイ及び印刷物上の表示文字))

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