高齢者のIT利用特性データベース

様々な入力デバイスと操作性

■ キーボード入力

■計測目的と計測内容

高齢者では、身体機能,認知機能などにおいて加齢の影響による機能低下が考えられ、若年者と同様の入力インターフェイスの使用が適切であるかどうかを明らかにすることを目的として、さまざまな入力デバイスを用いた実験を行った。 キーボードでは、キーボード上の文字の大きさにより操作性が向上するかどうか、文字の大きさと年齢に交互作用が認められるかどうかを明らかにする計測を行った。 被験者は20~29歳までの若年者14名、50~59歳までの中高年者16名、65歳以上の高齢者23名の計53名である。

■計測手順

・練習

キーボード入力に慣れるために従来のキーボードとほぼ同じ表示文字サイズである“中”(18pt.)で基本操作練習としてキーボード入力評価検査を行った。キーボード入力評価検査は、A4用紙1枚に500字(25文字×20列、フォント:MSPゴシック、サイズ18pt.)のアルファベットがランダムに印刷された課題を書見台に置き、被験者はその用紙を見ながら1分間になるべく多くの文字を正確に入力するという検査である。入力に際して、被験者には課題の文字列に準じた改行、すなわち25文字を入力後に改行するように教示した。全部で10回程度おこなった。1回のキーボード入力評価検査が終了すると被験者は改行を二回おこない、次の入力評価検査をおこなった。課題は1回のキーボード入力評価検査ごと,違う文字列(用紙)を被験者に提示した。キーボード入力の基本操作練習が終了後、練習による疲労の有無を調べるため、疲労自覚症状調べをおこない、被験者はキーボードの文字サイズ“中”を使用して、被験者の入力能力試験として、キーボード入力評価検査を行った。

・実験

被験者を各群(若年者,中高年者,高齢者)に分け、キーボード上の文字サイズ“小”または“大”のどちらか一方でキーボード入力をおこなうよう指示した。被験者はキーボード上の表示文字サイズ“小”または“大”のどちらかでキーボード入力評価検査をおこない、練習と同様に1分経過した後被験者は改行を二回おこない、続いて別の500文字が書かれた課題用紙によって入力評価検査をおこない、これを休憩することなく連続60回おこなった。 最後に、被験者に疲労自覚症状調べ及びキーボードの文字の見やすさに関するアンケートを実施した。

■計測条件・環境

キーボード上の表示文字のフォントはMSPゴシックとし、文字サイズは“小”(9pt.)、“大”(36pt.)の2種類とした。表示文字サイズを変更するキーはアルファベット26文字、数字10文字、ピリオド、カンマの計38文字で、各文字サイズでラベルシールに印刷し、シールを各キーの表面に貼り付けた。キーボードの入力方式はローマ字入力で、キーボード入力の際に使用するソフトウェアはMicroSoftWord 2000とした。

キーボード入力をおこなう際に用いた装置の仕様は以下の通りである。

・コンピュータ(OPTIPLEX GX150-1200SF(2K),DELL)

CPU:PentiumⅢ 1200MHz RAM:128MB 2次キャッシュ:256KB HDD:40.0GB CD-RW:読込24倍速/書込8倍速/書換4倍速 FDD:3.5”×1 キーボード:109型キーボード VRAM:8MB 解像度:1600×1200ドット(256色) 外形寸法(幅×高さ×奥行[mm]):319.0×90.0×354.0

・ディスプレイ(17”マルチスキャンディスプレイ,MITSUBISHI)

サイズ:17” 最大解像度:1280×1024 ピッチ:0.25mm 水平/垂直周波数:30~70kHz/50~125Hz 入力信号:RGBアナログ 入力端子:ミニD-sub15ピン 外形寸法:(幅×高さ×奥行[mm]):410.0×406.0×425.0

・OS: Windows2000(SP2)

■計測結果

キーボード入力のパフォーマンスの評価指標は1分間の入力文字数、正答文字数、正答率である。年齢とキーボードの文字の大きさ(大、小)を被験者間要因として、分散分析を実施し、年齢と文字の大きさが入力速度にいかなる影響をおよぼすかを明らかにする。 中高年者群と高齢者群のコンピュータ使用経験がないグループに関しては、文字の大きさが入力数と正答数の2つのパフォーマンスへ及ぼす影響が認められた。一方、中高年者群と高齢者群のコンピュータ使用経験があるグループに関しては、若年者群の場合と同様に、文字サイズがパフォーマンスに及ぼす影響はほとんどみられなかった。若年者群に比べて中高年者群と高齢者群のパフォーマンス(作業効率)は約半分程度であった。 キーボードの文字の大小による見やすさのアンケートでは、各年齢群ともに、文字サイズ大の方が見やすいと回答した。しかし、若年者群に関しては、キーボード文字の大きいほうが見やすさの評価が高いにもかかわらず、文字の大きさがパフォーマンスに及ぼす影響はほとんど観察されなかった。

■参考

高齢者のIT利用特性データベース構築等基盤設備整備事業 (抜粋:入力デバイスの利用に関する問題点・キーボード入力)

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