高齢者のIT利用特性データベース

認知特性

■ 記憶力実験 長期記憶

■計測目的と計測内容

中若年者と高齢者の記憶力の程度を確認し、どのようなデザイン要素に対して記憶力が影響しているかを明らかにすることを目的に、比較的短時間内での機器操作を想定した記憶に関する実験(長期記憶)を行った。

■計測手順

実験開始画面に「指示をお待ちください」というボタンが表示される。このボタンを押すと1秒後に画面中央にオブジェクトが2秒間表示されて消える。1分後に被験者に提示されたオブジェクト名を口頭で答えさせる。その後5分後にもう一度被験者に提示されたオブジェクト名を口頭で答えさせる。これらの音声を被験者の胸元につけた小型マイクで録音した。ただし、待ち時間の1分、5分の間は新聞を読ませる。被験者が2回目に答えた後に「指示をお待ちください」というボタンを押すと次のオブジェクトが表示される。この操作を9回反復する。

■計測条件・環境

表示するオブジェクトには数字・アルファベットの文字列(3文字・5文字・7文字の単語及び無意味な羅列)があり、試行ごとに異なる。長期記憶力の評価指標として正答数を測定する。

記憶力_オブジェクト表

■計測結果

提示文字数3文字で1分後に聞き取りをした場合、若年者、高齢者ともに正答率は100%であった。5文字を提示して、1分後に聞き取りをした時の正答率では、若年者はいずれの文字に対しても1分後の正答率は100%であったのに対し、高齢者は単語と無意味綴り文字の正答率が10~15%低かった。7文字の場合は、若年者の正答率は約90%であったのに対し、高齢者は単語の場合、約65%、数字の場合約50%、無為綴りの場合約10%の正答率であった。文字数5文字で5分後の正答率では、若年者の場合、単語の正答率は100%であったが、数字と無意味綴りの正答率は90%に低下した。高齢者の場合は数字の正答率が100%で変化しなかったのに対して、数字と無意味綴りの正答率は1分後よりさらに低下し75~80%であった。7文字で5分後の正答率では、若年者の正答率は約90%と5文字の場合と変わらなかったが、高齢者の正答率は単語で約70%、数字約45%、無意味綴り約12%であった。これらの結果は、短期記憶実験の結果からも示されたように、意味のわかる用語を用いることが重要であることを示している。

■参考

高齢者のIT利用特性データベース構築等基盤設備整備事業 (抜粋:認知適合性・記憶力)

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