高齢者対応基盤整備データベース

合図に対する反応と歩行速度の変化

■計測内容

横断歩道の信号が赤から青に変わって歩き出す、エレベーターのドアが開いて乗り込むというように、注意して合図を待っている状態から合図とともに歩き出す場面に、日常生活で遭遇することはよくある。しかし、高齢者になると反応が遅くなり、例えば青信号の点灯中に横断歩道を渡りきれなかったり、エレベーターに乗り込む前にドアが閉まったりするということが考えられる。この計測では10m自由歩行で用いた歩行処理プログラムを使用して、合図があってから歩き出すまでの反応と、歩行速度の変化(加速状態)を測定した。なお、合図には音刺激,光刺激,音と光の刺激(同時に提示)の3種類を用いた。

 

■計測機器

1) 歩行速度計測装置:(株)竹井機器製 歩行タイマー S-01046

2) 記録装置:(株)竹井機器製 歩行タイマー処理プログラム

3) 記録装置用PC:Logitec製 LCM-17FS3

〔計測装置の概要〕

 

■計測条件

・計測条件を以下に示す。

計測条件 計測項目 
音刺激:ブザー音

・合図があってから歩き出すまでの反応時間(0m地点の経過時間)を記録する。

・歩き出してから1mごとの経過時間を1~5mまで記録する。

光刺激:赤い光の点灯
音・光刺激:ブザー音と赤い光の点灯
(同時に提示)

(歩行路:幅1m,全長12m, 床面:カーペット敷き,色=グレー)

 

■計測方法

測定手順

(1) 歩行路上1m区間ごとに赤外線センサを配置する。センサは歩行路から270mmの高さに設置する。(ほぼ膝下の部分が赤外線レーザーを遮るようにする)

(2) 合図(音・光・音と光)の種類ごとに3回ずつの計測とし、全9回の計測を行なう。計測順序は乱数表より予め決めておく。

(3) 3種類の合図について説明して1回ずつ提示し、確認してもらう。

(4) 被験者をスタート位置に立たせ、合図を注意して待っている状態にする。

(5) 前方から提示する合図とともにスタートしてもらい、歩き始めから最初にセンサを遮った時までの時間を測定する。

(6) なお、スタート時にセンサに触れることがないように、1番目のセンサはスタート位置から5cmの間隔をあけて配置し、この位置を0m地点とする。2番目のセンサから1m間隔で配置する。

〔情報に対する反応:計測方法〕

 

被験者への教示 

(1) 日常生活の中では、横断歩道で信号が青に変わって歩き出す場面やエレベーターのドアが開いて乗り込む場面のように、注意して合図を待っている状態から合図とともに歩き出すという場面があります。

(2) 計測では音・光・音と光の3種類の合図でスタートしていただきます。

(3) 合図の種類ごとに3回ずつ計測を行いますが、順番についてはランダムに計9回の計測を行います。

(4) 合図がありましたら、すぐに歩き出して前方の籠に鉛筆を入れて戻ってきてください。

 

■計測結果

計測年:2001年度

計測人数:

年代 20~29 30~39 40~49 50~59 60~69 70~79 80~ 合計
男性 11 9 10 13 34 26 11 114
女性 12 12 12 16 32 28 6 118
合計 23 21 22 29 66 54 17 232

 

結果のまとめ:

  • 通過時間については、各条件とも3回の計測の中央値を求めた。
  • 計測結果(1)より、男性は80代、女性は70代,80代で反応が遅くなっている。
  • 計測結果(2)より、条件別では音刺激に対する反応が遅いという結果になった。これには、光の合図が一瞬であるのに対して、音の合図は鳴り始めから鳴り終わりまで1秒間の長さで提示されているということが影響していると思われる。「合図があったらすぐに歩き出してください」という教示を行っているにもかかわらず、つい最後まで音を聞いてしまって、それから歩き始めてしまうと申告した被験者も多かった。
  • 計測結果(3)より、速度の変化については、どの年代でも2~3m地点辺りで定常歩行になり、3mまでで加速が終了している。

 

計測結果:

(1) スタートからの経過時間:3回の計測の中央値

 

(2) 合図があってから歩き出すまでの時間(0m地点):3回の計測の中央値

 

(3) 条件別の速度の変化:3回の計測の中央値

 

■報告書PDF

2001年度 高齢者対応基盤整備計画研究開発 第2編データベース整備(動態・視聴覚特性)より抜粋 p32-34,54-60,203-209,222-229

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