高齢者対応基盤整備データベース

連続階段昇り降り(持久力の計測)

■計測内容

高齢者にとって、階段の昇り降りは移動動作の中でも負荷の高いものであると思われる。また、高齢者になると持久力の低下が起こり、長時間の移動動作や運動が困難になるのではないかと思われる。そこで、この計測では階段の昇り降り動作について計測し、同時に持久力がどの程度低下するのかを調べた。一般的な体力測定で持久力を調べる場合は、踏み台昇降運動を用いることが多いが、この計測では高齢者への負担を考慮して、階段の昇り降りを自分のペースで行ってもらい、安全に持久力を測った。なお、使用する階段はハートビル法※で制定されている階段の寸法を参考とした。

※ハートビル法:
(高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律)
高齢者や身体障害者等をはじめ、全ての人が公共の建築物を円滑に利用できるようにしていくための法律(平成6年9月28日施行)

 

■計測機器

1) 階段
蹴上げ150mm,踏面300mm,幅1000mmの5段の木製の階段を2つ向き合わせて配置し、固定する。
両側に床面からの高さ750mmの手すりを取り付ける。

 

2) 血圧・脈拍計
オムロン製 デジタル自動血圧計 HEM-757 ファジィ
測定範囲:圧力/0~280mmHg,脈拍数/40~180拍/分,
測定精度:圧力/±4mmHg以内,脈拍数/読み取り数値の±5%以内

 

■計測条件

・運動前の脈拍数の測定
・階段一往復に要する時間の測定
・運動後の負担感の聴取
・手すりの使用の有無
・3分間の運動後の脈拍数の測定

 

負担感に対する評価

scale 感覚
20  
19 ・・・非常にきつい
18  
17 ・・・かなりきつい
16  
15 ・・・きつい
14  
13 ・・・ややきつい
12  
11 ・・・楽である
10  
9 ・・・かなり楽である
8  
7 ・・・非常に楽である
6  

(RPE:Ratings of perceived exertion(自覚運動強度)を参考にした)

 

■計測方法

測定手順

(1) 運動前の脈拍数を安静状態で計測するため、2分間着座姿勢で待機してもらう。

(2) 血圧と脈拍数を着座姿勢で測定する。

(3) 3分間繰り返し階段昇降を行ってもらい、1往復にかかる時間をそれぞれ測定する。

(4) 3分後の脈拍数を着座姿勢で測定し、RPE指標(自覚運動強度)を用いて負担感について聴取する。。

 

被験者への教示 

(1) この計測では、階段を昇り降りしていただいて持久力を調べます。3分間の間、繰り返し階段を昇り降りしていただきますが、手すりをお使いいただいても結構です。

(2) 決して無理をせずにご自分のペースでお願いいたします。途中で気分が悪くなった場合には、すぐに中断してください。

 

■計測結果

計測年:2001年度

計測人数:

年代 20~29 30~39 40~49 50~59 60~69 70~79 80~ 合計
男性 10 9 10 13 34 25 10 111
女性 11 11 11 16 32 27 5 113
合計 21 20 21 29 66 52 15 224

 

結果のまとめ:

  • 計測結果(1)より、女性は70代以上、男性は80代以上になると一往復に要する時間が長く、ゆっくりと昇降運動をしている。
  • 計測結果(2)より、脈拍数については、80代女性が運動前後とも高く、上昇率も他の年代に比べて高くなった。
  • 計測結果(3)より、負担感について年代による差が見られなかったのは、高齢者の場合には一往復に要する時間が長く、手すりの使用率も増えているということから、各自マイペースな運動を行った結果だと思われる。

 

計測結果:

(1) 一往復の昇り降りに要する時間

一往復の昇り降りに要する時間を年代別平均値で示す。

 

(2) 脈拍の上昇率

階段昇降後(運動後)の脈拍数の階段昇降前(運動前)の脈拍数に対する上昇率を年代別平均値で示す。

 

(3) 負担感

負担感に対する内観評価を年代別平均値で示す。

【縦軸:評価】
非常にきつい
かなりきつい
きつい
ややきつい
楽である
かなり楽である
非常に楽である

 

■報告書PDF

2001年度 高齢者対応基盤整備計画研究開発 第2編データベース整備(動態・視聴覚特性)より抜粋 p32-34,113-123,213,222-229

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