高齢者対応基盤整備データベース

ラウドネス

■計測内容

音の大きさの感じは周波数によって大きく変化する。健聴者は一般に低い周波数の音や高い周波数の音では感度が低く、2000~4000Hzぐらいが最も感度が高くなっている。 しかし、高齢者では4000Hzの音は高すぎて感度が低くなっている場合があり、音の感じ方が若年者と異なっていると考えられる。この計測では、周波数、音圧レベルの違う音をランダムに提示して、それぞれの音に対する大きさ感を「聴こえない」,「とても小さい」,「中くらい」,「大きい」,「とても大きい」,「聴きたくない」という評定語を用いて判断をしてもらい、その結果を0~50に点数化し、ラウドネス特性を求めた。

■計測機器

1) 騒音計:リオン社製 NA-27K

2) ラウドネス試験システム:ドイツ ウェストラ社製

・パソコン
・WESTRA DISITAL AUDIOMETRIE
・タッチパッド
・試験音スピーカー
タッチパッド  

 

■計測条件

試験用音源は1/3オクターブバンドノイズ。
提示する周波数は500,630,800,1000,1250,1600,2000,2500,3150,4000,5000,6300Hz、音圧レベルは20dBから90dBの間で5dBピッチ。

 

■計測方法

測定手順

(1) 音量調整後、被験者に入室、着席してもらう。耳の位置がスピーカーから1.5mの距離で、体の正面になるように椅子の位置を調整する。

(2) ラウドネス試験用システムをスタートする。

(3) 1つの試験音が提示されてから次の試験音が提示されるまでの時間は標準で12秒に設定してある。タッチパッド上のランプが点滅している間でなければ信号が読み取れないので、タッチパッドに触れるタイミングがずれていないかどうか注意しておく。被験者にとって試験音の標準の提示時間が短かすぎる場合にはタッチパッドを押すタイミングがずれてしまうので、その場合は測定を中断し、もう一度教示を行い、場合によっては試験音の提示時間を長くして測定し直す。

(4) 3トラック全部を聴き終わるまでには30~40分の時間を要する。途中で集中力が途切れてしまい、回答できない場合もあるので、回答のなかった音に対してもう一度音源を提示し、試験を行う。

 

被験者への教示 

(1) これから色々な音を聴いて頂き、その音の大きさに対する感じ方を調べます。

(2) スピーカーから色々な大きさ・高さの音が出ます。それぞれの音に対してこちらのパネルにありますように、「聴こえない」「とても小さい」「中くらい」「大きい」「とても大きい」「聴きたくない」といった感じ方をご自分で決めてください。

(3) パネルは一番下が「聴こえない」、一番上が「聴きたくない」となっていますので、その感じ方がどのあたりの位置になるのか、中央のラインを指先で軽く押して示してください。

(4) 「中くらい」「大きい」等のポイントは目安のために貼ってありますので、ポイントの位置だけではなく、ラインのどの部分を押して頂いても構いません。

(5) タッチパネルの左上のランプが点滅している間に中央のラインに指先を触れてください。

 

■計測結果

計測年:2000年度

計測人数:

年代 20~29 30~39 40~49 50~59 60~69 70~79 80~ 合計
男性 10 11 10 12 30 29 8 110
女性 13 9 10 15 29 27 3 106
合計 23 20 20 27 59 56 11 216

結果のまとめ:

  • 計測結果(1)に、若年者と高齢者の比較として20代・70代平均値のデータを重ねたグラフを示す。なお、高齢者になると高周波数域で聞こえない音があり、回答がない場合があるが、その場合はデータを省いた。
  • この結果を見ると、500Hzから1000Hzぐらいまでは若年者も高齢者も音の大きさの感じ方に差がないようである。 しかし、2000Hz~4000Hzの高周波数域では、高齢者は若年者と比べると、音圧レベルの低いときには小さく感じ、あるレベル(50dB程度)で急激に大きく感じるようになって、更に高いレベル(80dB程度以上)になると若年者と同程度の大きさに回復するというリクルートメント現象が現れている。
  • また、5000Hz,6000Hzと更に周波数が高くなると、80dB以上になっても、70代,80代の高齢者にはそれほど大きな音とは感じられないという結果になった。これは、高い周波数の音が聴こえにくくなっているためと考えられる
  • 計測結果(2)に、周波数ごとに、健聴者と難聴者の比較として聴力レベル(4分法)-10~0dBの被験者と31~40dBの被験者のデータを重ねたグラフを示す。 聴力レベルが31~40dBの軽度の難聴の人の場合でも、高齢者の場合と同様に2000Hz~4000Hzの高周波数域でリクルートメント現象が現れている。
  • この結果を見ると、41dB以上の難聴の人は、当然のことながら、1000Hz~4000Hzでは40dB以下の小さい音は聴こえなくて、50dBを超えて急激にラウドネスが上昇しているが、5000Hz,6000Hzまで周波数が上がると、いくら音量を上げても大きい音だとは感じていない。
    ※リクルートメント現象:高齢化により聴覚が衰えると、小さな音は聴こえにくくなるが、大きな音は健聴者と同様に大きく聴こえるという現象。

 

計測結果:

(1) 周波数別平均値(20代と70代の比較)

 

(2) 周波数別平均値(聴力レベル別(4分法))

 

■報告書PDF

2000年度 高齢者対応基盤整備計画研究開発 第2編データベース整備(動態・視聴覚特性)より抜粋 p354-355,370-399,420-421

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