高齢者対応基盤整備データベース

報知音に対する聴感調査

■計測内容

家電製品からは、受付音、終了音、警報音等の様々な報知音が出るようになっている。 報知音の多くには4000Hz付近の高い音が使われているが、このような高い周波数では高齢者には聴こえにくいと考えられる。 そこで、この計測では、周波数,長さ,繰り返し回数の異なる純音を提示し、それぞれの音の聴こえやすさや感じ方を判断してもらうことによって、 高齢者にも聴こえやすく何の音であるか分かりやすい報知音の作成に役立つデータを収集した。

■計測機器

1) 刺激音提示装置

2) 報知音提示用パソコン:富士通製 FMV-5133D5

 

■計測条件

1) 試験用音源:HQL作成の試験用音源

刺激音周波数: 250,500,1000,2000,3000,4000,5000,6000Hz
波形: サイン波
パターン:

a) 短音1回(0.25秒)

b) 長音1回(1.0秒)

c) 短音3回(短音(0.25秒)を0.5秒間隔あけて3回提示)

d) 長音3回(長音(1.0秒)を0.5秒間隔あけて3回提示)

提示レベル: 55dBA

 

■計測方法

測定手順

(1) 音量調整後、被験者に入室、着席してもらう。耳の位置がスピーカーから1.5mの距離で、体の正面になるように椅子の位置を調整する。

(2) 試験音をあらかじめ決めた順番に従って提示していく。音を1つずつ聴いてもらい、机上に提示した回答パターンから「音の聴き取りやすさ」、「音の好ましさ」、「音を何に使用すればよいと思われるか」の順に感想を聞き、回答を記入シートに記録する。「音を何に使用すればよいか」については複数回答可とする。

(3) 音を提示しても回答がない場合には、再度同じ音を提示して確認し、回答(聴こえない等)を記録する。

 

被験者への教示

(1) これから聴いていただく音は家電製品などで使われているお知らせ音や、終了音などをイメージしたものです。音の聴き取りやすさ、好ましさ、どのような時に使われる音にふさわしいかについて、感想をお伺いします。

(2) 音を聴いていただいて、お手元の回答シートから番号を選んでください。

(3) 感想については、次の5段階のどれに相当するかを選んでください。

(4) なお、聴き取りにくい場合や、どのような音かわかりにくい場合は、もう一度音を提示します。

 

・「聴き取りやすさ」に対する5段階評価

点数 評価
1 聴き取りやすい
2  やや聴き取りやすい
3 どちらともいえない
4 やや聴き取りにくい
5 聴き取りにくい

 

・「好ましさ」に対する5段階評価

点数 評価
1 好ましい
2  やや好ましい
3 どちらともいえない
4 やや好ましくない
5 好ましくない

 

・「どのような時に使う音か」に対する回答パターン

  回答パターン
1 受付音
2  経過音
3 終了音
4 警報音
5 その他

(5.その他を選んだ場合は、具体的に何に使用すればよいかイメージするものがあれば記録する。)

 

■計測結果

計測年:2000年度

計測人数:

年代 20~29 30~39 40~49 50~59 60~69 70~79 80~ 合計
人数 23 20 20 26 59 56 11 215

結果のまとめ:

  • 計測結果(1)の聴き取れ状況からわかるように、70代,80代の高齢者になると、2000Hz以上の高い周波数で聴き取れない場合があり、パターンによる差は多少あるものの、周波数が高い音ほど全体的に聴き取れなくなっている。
  • 計測結果(2)では、カテゴリー別に「聴き取りやすい」を1点,「やや聴き取りやすい」を2点,「どちらともいえない」を3点,「やや聴き取りにくい」を4点,「聴き取りにくい」を5点として年代別に聴き取りやすさの平均値を求めた。なお、音が聴こえなかった場合は6点として集計に加えた。
  • この結果を見ると、すべてのグラフで、1000Hz以上で右下がりの傾向があることから、若年者も高齢者も、共通して高い周波数の音を聴き取りやすくないと感じており、加齢が進むほど、その傾向は強くなっている。聴き取りやすさについてはパターンの違いによる差はほとんどないが、短音1回については、共通してやや聴き取りにくいと感じている(20代以外)。
  • 計測結果(3)に、好ましさについての年代別、周波数別の結果を示す。カテゴリー別に「好ましい」を1点,「やや好ましい」を2点,「どちらともいえない」を3点,「やや好ましくない」を4点,「好ましくない」を5点として 年代別に平均値を求めた。なお、音が聴き取れなかった場合のデータは母数から除外した。
  • この結果を見ると、若年者も高齢者も高い周波数の音はあまり好ましくないと感じているが、パターンの違いによる差はほとんどない。
  • 計測結果(4)より、受付音としては短音1回を選択した被験者が多いが、高齢者よりも若年者の方で選択率が高いことがわかる。
  • 計測結果(5)より、経過音としては短音3回を選択する人がやや多いことがわかる。
  • 計測結果(6)より、終了音としてふさわしい音についてはどのパターンも差がないが、短音1回の選択率が全体的に低いことがわかる。
  • 計測結果(7)より、警報音については長音3回を選択した被験者が多いことがわかる。
  • 全体的に、若年層の方が音を何に使用すれば良いか、パターンによる違いをよりはっきりと意識しているようである。逆に80代以上の高齢者になると、音のパターンの違いをほとんど意識していないと言える。これは、電子音に対する経験の違いであると考えられる。
  • 今回の評価実験は、聴取音量をA特性音圧レベル55dBAに固定して行ったものであり、音量依存性に対する検討を今後の課題として残している。

 

計測結果:

(1) 聴き取れ状況

 

(2) 聴き取りやすさ

 

(3) 好ましさ

 

(4) 受付音としての選択率

 

(5) 経過音としての選択率

 

 

(6) 終了音としての選択率

 

 

(7) 警報音としての選択率

 

■報告書PDF

2000年度 高齢者対応基盤整備計画研究開発 第2編データベース整備(動態・視聴覚特性)より抜粋 p354-355,404-414

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