高齢者対応基盤整備データベース

文字色と背景色の組み合わせと表示の見えやすさ

■計測内容

日常生活では、色彩の違いを用いた表示や表現は非常にたくさん使われているが、色の組合せや濃淡の付け方によっては、見やすい表示となったり 見にくい表示となったりすることがある。
ここでは商品のパッケージや説明書などの印刷物を想定して、赤、黄、緑、青の4色と無彩色の5種類の色を文字色や地色に用いて、組合せの仕方や文字色、 地色の濃さによって文字の見やすさがどのようになるかを計測する。

■計測機器

1)計測室
・計測室には外光を遮断できる組立式暗室(高さ2m×幅1.8m×奥行き1.6m)を使用した。(右図参照)
照明機器等の発熱による温度上昇を防ぐため、外光が遮断できるタイプの吸気口と換気扇を設置している。 ・・照明には蛍光灯(松下電工製FHR32EX相当品)を使用し、照度調節装置により視標面照度を1000 lxに設定して計測した後、遮光用照明カバー(目的照度が得られるように開孔率を調整したカバー)を蛍光灯に取り付けて10 lxおよび1 lxに調節し計測した。
2)評価用カード
視標濃度100%、55%、35%、15%のひらがなを上部から下のほうにサイズを変えて配置した視標をオフセット印刷により作成した。最も大きいひらがなのサイズは3m視力の0.1に相当するランドルト環と同じ外径寸法になるように設定している。
3)分光透過率変換フィルタ(眼鏡)
  短波長になるほど分光透過率が減少する特性をもたせたフィルタを用いて、高齢者の色の見え方をシミュレートすることとした。このフィルタ(眼鏡)は20代の人が装着した場合の網膜での実効輝度が70代の高齢者に相当するように調整されたものである

■計測方法

測定手順

(1)使用用具として、記録用データシート、筆記用具、評価用カード、照度計を準備する。

(2)環境照度を1lxに調節する。

(3)最初に白地に黒色文字の印刷濃度を変えたカードを渡し、1lxでの測定を行う。これは、被験者が判断に迷ったときの参考にするためのカードなので、いつも、このカードを参考にして分類するのではないことを、十分説明する。

(4)次に評価用カードを50枚、被験者に渡し、1lxでの計測を行う。被験者が仕分けを完了したら次の50枚を渡す。終われば最後に50枚を渡す。

(5)終了後、照度を10lxに調節する。

(6)それぞれのボックスからカードを取り出し、評価結果が分かるように重ねて保管する。続いて、新しい評価用カードを準備する。カードの保管、新しいカードの準備も含めてこの明るさに慣れるよう、2分以上の時間をとるようにする。このとき、被験者が暗室の外に出ないようにしてもらう。もし、暗室の外に出たら、計測時の明るさに2分以上慣れてから、計測を始めるようにする。

(7) 1lxと同様の方法で10lx、1000lxでの計測を行う。

被験者への教示

(1)この測定は明るさや色の組合せ、印刷の濃さが変わったときに表示の見えやすさがどのようになるかを調べることを目的としています。

(2)所定の位置で、カードに書いてある文字が見えやすいかどうかを判別していただき、ご自分の評価に相当する答えが書いてある箱に、そのカードを入れていただきます。

(3)カードを左右に傾けますと評価が変わりますので、傾けないように注意してください。また、時間をかけずに、感じたとおりに、気楽に判断して、仕分けをしてください。

(4)判定は、次の5段階です。

1) 文字が書いてあるかどうか分かりにくい
2) 見えにくい
3) どちらかというと見えにくい
4) どちらかというと見えやすい
5) 見えやすい

(5)少し時間がかかりますが、計測が終わるまで外には出ないようにしてください。

 

■計測結果

計測年: 2000年

計測人数:

年代 20~29 30~39 40~49 50~59 60~69 70~79 80~ 合計
男性 10 10 10 12 31 30 8 111
女性 11 9 9 14 27 28 3 101
合計 21 19 19 26 58 58 11 212

結果のまとめ:

  • 見えやすい組み合わせ(全照度で評価点数4以上)
    薄い赤と濃い赤、薄い赤と濃い青、比較的薄い赤と黒、比較的濃い赤と白、全ての黄と黒または濃い灰色、濃い黄色と濃い緑、濃い黄と濃い青、濃い緑と濃い黄、比較的薄い緑と黒、濃い緑と白、比較的薄い青と黒、比較的濃い青と白、黒または比較的濃い灰色と白、薄い灰色と黒
  • 見えにくい組み合わせ(照度10lx以下または1lxで評価点数2以下)
    薄い赤と比較的濃い黄、濃度が同じ程度の青と緑、濃度が近い黄同士、
    薄い緑と中間濃度の黄、薄い赤と薄い灰色、薄い緑と白、濃い青同士

※濃い:75%以上、比較的濃い:50%以上、比較的薄い:50%以下、薄い:25%、中間濃度:50%、全て:25~100%

※評価点数:
5  見えやすい
4  どちらかというと見えやすい
3  どちらかというと見えにくい
2  見えにくい
1  文字が書いてあるかどうか分かりにくい

計測結果:

(1) 表示の見えやすい組み合わせ

◎:全照度、全年代にわたって見えやすい組み合わせ(平均点数4以上)
:使用していない組み合わせ
(注) 無彩色100%は黒、無彩色0%は白

 
 
   
   

(2) 表示の見えにくい組み合わせ

××:10lx以下で見えにくい組み合わせ(平均点数2以下)
×:1lx以下で見えにくい組み合わせ(平均点数2以下)
:使用していない組み合わせ
(注) 無彩色100%は黒、無彩色0%は白

 
 
   
   

 

■報告書PDF

2000年度 高齢者対応基盤整備研究開発 第2編データベース整備(動態・視聴覚特性)より抜粋p241-350

人間特性データベース・カテゴリー