高齢者対応基盤整備データベース

視覚 3m生活視力(反射表示)

■計測内容

日常生活と同様の矯正条件での視力(生活視力)を計測する。 明るさ、ランドルト環の濃度および計測条件を変えて、視距離3m、での生活視力を計測する。 この計測では、明るさ、コントラストに着目した計測を行うこととし、計測条件は日常生活状態での見え方等を想定して設定した。 明るさは一般作業場の1000lx、一般家庭屋内の100lx、屋内の薄暗い場所の10lxの3種類とし、照明装置には高演色性の蛍光灯を用い、反射光による視力計測を行った。 生活視力に加えて、他の計測結果とのリファレンスとするために裸眼視力の計測も行った。

■計測機器

1) 擬似モニタ
計測室には外光を遮断することができる組立式暗室(高さ2m×幅2m×奥行き4m)を使用した。暗室内の配置を図3.3.1に示す。照明機器等の発熱による温度上昇を防ぐため、外光が遮断できるタイプの吸気口と換気扇を設置した。
また、視標面の照明用には蛍光灯を使用したが、計測時に光が直接目に入らないように設計された蛍光灯ボックス内に取り付けた。視標面の照度調節はボックスに取り付けてある照度調節装置で行うが、100lx、10lxの調節は、所定の照度になるよう開口部を調整したカバーをボックスの前面に取り付けて行う。
2)照度調節
この視力計測では反射光での視力を計測した。視標面の照明には蛍光灯(松下電工製FHR32EX相当品)を使用し、照度調節装置により視標面照度を1000lxに設定して計測した後、遮光用照明カバー(目的照度が得られるように開孔率を調整したカバー)を蛍光灯に取り付けて100lxおよび10lxに調節し計測した。
3)視標

背景色 ランドルト環の印刷濃度(%)
白(N10) 15%
35%
55%
100%
視距離3m計測用ランドルト環をオフセット印刷により作成し、視標に使用した。ランドルト環の切れ目は上下左右の4方向、計測可能な視力は0.1~3.0である。
また、この計測では背景色と文字とのコントラストが変わったときに視力がどのようになるかを計測するため、ランドルト環(黒色)の印刷濃度(視標濃度)を変えた次の4種類の視標を作成し、使用した。

 

■ 計測条件

計測条件を以下に示す。

視表面照度 矯正条件 視標濃度
1000lx 生活視力(両眼) 15%
35%
55%
100%
生活視力(右眼) 100%
生活視力(左眼) 100%
裸眼視力(両眼) 100%
裸眼視力(右眼) 100%
裸眼視力(左眼) 100%
100lx 生活視力(両眼) 15%
35%
55%
100%
10lx 生活視力(両眼) 15%
35%
55%
100%

■計測方法

測定手順

(1) 使用用具として、記録用データシート、3m視力視標(3種類)、正解表、遮眼子、順応時間計測用ストップウオッチを準備する。

(2) 照明装置(少なくとも計測30分前に点灯)を調節し、視標掲示パネル表面照度を1000lxに合わせる。

(3) 椅子を所定位置に配置する。

(4) 1000lxの測定 → 2分間の順応 → 100lxの測定 → 2分間の順応 → 10lxの測定(途中で中断する場合は、2分間の順応後、測定を開始する)

(5) 視標は3種類あるので、適宜取り替えながら計測する。

(6) 生活視力の右眼、左眼視力、および裸眼の視力は照度変更の直前に計測する。

例:1000lxの測定 (1) 1000lx生活視力の測定 ・ 被験者の位置、使用矯正具を確認する。
(2) 2分間の順応を兼ねて計測前の教示を行う。
(3) 最初の視標を視標掲示パネルのフックに取り付け、一番前の視標から読んでもらう。
(4) 判定方法(他の計測でも同じ) 視力0.1のランドルト環を一つ示す。
・被験者の回答が正しければ一つ小さいサイズに移る。
・回答を間違えるまで繰り返す。
・読めない、あるいは間違えた場合は同視力レベルのランドルト環を読んでもらう。
・3個以上正解の場合は一回り小さいサイズに移り、同じように繰り返す。
・正解が2個以下の場合は一回り大きなサイズに戻る。
・正解が3個以上得られる視力を、その被験者の視力値とする。
・結果をデータシートに記録する。
・視標を1枚めくり、同様の計測を行う。
(5) 1000lxにおけるその他視力の測定 ・ 生活視力測定後、次の順序でその他視力を測定する。生活視力と同じ矯正条件での右眼視力 → 左眼視力 → 裸眼両眼視力 → 右眼視力 → 左眼視力
(6) 使用する視標は視標濃度100%(以下A視標という)である。
(7) 右眼、左眼視力測定の場合は遮眼子で、それぞれ左眼、右眼を圧迫しないようにふさぐが、 このとき力が入らないように、ふさいだ側の目もあけているように教示する。
(8) 照度変化時の生活視力測定 ・ 1000lx視力測定後、次の順序で照度変化時の生活視力を測定する。生活視力と同じ矯正条件での100lx生活視力 → 10lx生活視力
(9) 2分間順応の後、視力表セットを取り替え、1000lxと同様の手順で、100lxでの計測を行う。ただし、A視標を用いた計測では、両眼の裸眼視力のみを測定し、記録する。
(10) 引き続き2分間順応の後、100lxと同様の手順で10lxでの測定を行い、記録する。

被験者への教示

(1) 昼間見えても夕方は見えないとか、濃い色は見えても薄い色は見えないという感じは誰にでもあります。この測定は、周り の明るさや、見るものの濃さを変えたときにどのように見えるかを調べることを目的にしています。

(2) 測定は見るものの濃さを変えたときの視力を、周りの明るさを変えて測定します。

(3) ほとんどの測定は普段と同じ状態で、つまり眼鏡をかけている方はかけた状態で両目で見ていただきますが、いくつかの測定では、眼鏡を外した状態や、 片目ずつで測定します。なお、コンタクトレンズを付けておられる方は、後ほど改めて、コンタクトレンズを外したときの視力を測定します。

(4) 普段の生活でどの程度ものが見えているかを調べるのが目的ですから、目を細めたり、力を入れて見たりしないよう、普段通りの見方でお願いします。測定には少し時間がかかりますが、よろしくお願いします。

 

■計測結果

計測年: 2000年

計測人数:

年代 20~29 30~39 40~49 50~59 60~69 70~79 80~ 合計
男性 10 10 10 12 31 30 8 111
女性 11 9 9 14 27 28 3 101
合計 21 19 19 26 58 58 11 212

結果のまとめ:

  • 年代が高くなると読みとれるランドルト環の外径寸法(視標高さ)は大きくなる。
  • 照度が低くなるにつれて読みとれる視標高さは大きくなる。
  • 視標濃度が薄いほど読みとれる視標高さは大きくなる。
  • 特に高齢者では、照度が低い場合および視標濃度が薄い場合の視力低下が顕著である。
  • 70~80代の高齢者は20~30代の人に比べて表示サイズを約2倍にしないと読みとれない可能性がある。
  • 70代以上での視力低下が顕著に見られる。

計測結果:

(1) 3m生活視力 照度別

(2) 3m生活視力 年代別

 (3) 年齢と3m生活視力の関係

 

■報告書PDF

2000年度 高齢者対応基盤整備研究開発 第2編データベース整備(動態・視聴覚特性)より抜粋p241-350

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